使われなくなった小さな農場 農場の真中にポツンとゆっくりのおうちがあった そこには『ちいさなあき』が住んでいる 「ねえ、おねえちゃん・・・」 「なあに『みのりこ』?」 「・・・あったかいね」 「ゆん・・・あったかいねえ・・・」 冬が終わり温かい季節を向かえてからも 末永く『ちいさなあき』がいた 【小さな秋 完】
「おはよう『みのりこ』 さいきんおひっこししてきた『しずは』だよ ごあいさつにおちばをたくさんもってきたよ せっかくだからもらってね? そうそうどこかにおうちになりそうな いいばしょがあったらおしえてほしいな すこしとおくからきたからもうくたくたなんだ」 「え・・・えっとね・・・あのね・・・ 『みのりこ』いいおうちしってるよ・・・」
季節は秋 使われなくなった農場に『ちいさなあき』がいた ゆっくりの名前は『みのりこ』 小さな農場だがゆっくりにとっては遥か広大な土地 『みのりこ』は農場の真中にポツンとおうちを構えている 吹く風が少し冷たい 『みのりこ』は本能的に越冬の準備を始めていた
『みのりこ』が偶然見つけたサツマイモの稔る むーしゃむーしゃプレイス 痩せた土地でも高い繁殖力をもつサツマイモは 人のいない農場で強く逞しく育っていた サツマイモは『みのりこ』にとって 一番の御馳走であり主食になっている この冬もこのサツマイモの世話になるのだろう 『みのりこ』はうんしょうんしょと 一つずつサツマイモを引きずりおうちへ運んでいく
『みのりこ』はごはんを運ぶのが得意だが 落ち葉拾いは苦手だった 越冬のごはんは十分に集まったので 明日は苦手な落ち葉拾い ちょっぴり憂鬱な気持ちが一層寂しさを際立たせる きっと自分は孤独なゆん生を過ごして 一匹で寂しく死んでいくのだ… 明日は少しサボろう…お昼まで寝ていよう…
『みのりこ』は思う 今年の冬も一匹でおとなしく過ごすのだろうかと… ただ何もなく一日が過ぎていく退屈な日々 越冬に余裕のある『みのりこ』にとって 冬は特に体も心も寒くなる寂しい季節だった 今年もゆっくりは一匹も農場に来ていない だからと言って外の世界は危険がたくさん とてもそんな場所へ出る気にはなれない